イラストレーションフェスティバル

福田利之

福田利之

福田利之

1967年大阪生まれ。大阪芸術大学グラフィックデザイン科卒業。株式会社spoonに入社し、1993年に独立。2005年に大阪から東京・吉祥寺に事務所を移し、現在に至る。CD、装画、絵本、ロゴ、雑貨制作のほか、テキスタイルブランド「十布」のデザインも手掛ける。主な著書に「福田利之作品集」「福田利之といくフィンランド」(ともに玄光社)「森の王国 福田利之・塗り絵BOOK」(グラフィック社)、共著に「祈る子どもたち」(アリエスブックス)「赤い金魚と赤いとうがらし」(ミルブックス)など多数。
HP:http://to-fukuda.com/
  http://tenp.shop-pro.jp/

心にズキンと突きささる作品の数々

愛情、優しさ、儚さ、悲しみ、強さ、暗闇、毒、傷み。福田さんのイラストを見ていると、生きていれば誰もが抱くであろう、あらゆる感情が溢れてくる。その少女は、何を見つめているのだろう。一本の花の俯く姿さえも、なにかを訴えかけているようだ。

先日、福田さんが作品を制作する場に立ち会わせていただいた。ティッシュペーパーでベースを作り、インスタントコーヒーで仕上げるという独特の工程は、すでにご存知の方も多いだろう。しかしそれ以上に驚いたのは、1枚の絵を完成させるまでのドラマだ。下絵を描き、キャンバスに写すところから始まり、輪郭をつけ、色を塗り、そこに色を重ね、切れ端さえ無駄にしないほど集めたアジ紙(味のある紙)の山から、ほんの小さなカケラを選んでコラージュし、また色を重ね、ニスを塗り、イメージと違えば直し、またニスを塗る。細やかで、熱のこもった作業が延々と続くのだ。その指先からは、福田さんの感性や、信念や、葛藤が見え隠れしている。

時間の経過とともに、次第に厚みを増していく作品。その厚みこそが、福田さんの絵から溢れてくるあらゆる感情の源なのかもしれない。完成した作品は、大きな花に包まれ、ドキッとするほど美しい笑みを浮かべた少女だった。人々に幸せを咲かせるような一枚。

イベント当日は、福田さんが一枚の作品を仕上げるまでの様子を動画でご紹介する。福田さんは微笑みながら言う。

「作り手の葛藤、往生際の悪さもふくめて、楽しんでもらえたら嬉しいですね」
(担当:渡辺洋子)