イラストレーションフェスティバル

北澤平祐

北澤平祐

北澤平祐

イラストレーター。神奈川県横浜市生まれ。東京都在住。魚座。アメリカに16年間在住した後に帰国し、イラストレーターとしての活動を開始。辻村深月、柚木麻子、林真理子を含む多数の書籍装画や、フランセ、花王メリットピュアン、KENZOなどの製品パッケージ、東京ソラマチ、渋谷ヒカリエなどのキャンペーンビジュアルまで、国内外の幅広い分野でイラストを提供している。
HP:http://www.hypehopewonderland.com/

あの子の横顔を追いかけて

近所の洋菓子店ですれ違った、可憐な女の子。書店に寄ると、物憂げな瞳と不意に目が合った。次の季節にまた洋菓子店に行くと、別人のように大人な装いをしていたが、すぐに分かる。言葉を交わしたわけでもないのに、ころころと変わる表情が気になって、あの子がいる場所を自然と通るようになった。彼女の名前はいまだに分からないけれど、書店で手にした本には「北澤平祐」というクレジットが書かれていて、今度は彼女を描いたその人を追いかけるようになった。

北澤さんのイラストレーションの中でも特に目を見張るのは、洋菓子店「フランセ」のお仕事。ブランドのリニューアル以来、北澤さんはロゴからパッケージまで広く手がけている。アートディレクターの河西達也さん(ザッツ・オールライト)と決めたコンセプトは、それぞれのパッケージを別の画材と手法で描くこと。デジタルで明快なラインと色彩で描くこともあれば、面相筆でアナログな質感を表現することもある。あえて利き手ではない左手で描いた絵もあるというから、開いた口が塞がらない。40度の高熱が出た時も、試しに線を引いたら今まで描いたことのないへろへろな線が描けたという逸話も聞いたことがある。

描くことに対する、飽くなき探究心。変化を楽しむ遊び心。積み重ねてもなお揺るがない本質的な作家としてのオリジナリティ。北澤さんが描く筆跡には、イラストレーションが持つ可能性が感じられる。こんな大層なことを書いているが、僕はあの子に恋をしているだけかもしれない。(担当:柿本康治)