イラストレーションフェスティバル

タダジュン

タダジュン

タダジュン

イラストレーター/版画家。版画の技法を使い、書籍や雑誌のイラストレーションを中心に活動中。主な仕事に『犯罪』『カールの降誕祭』(フェルディナント・フォン・シーラッハ/酒寄進一訳・東京創元社)『後藤明生コレクション』全5巻(国書刊行会)『MONKEY』(スイッチ・パブリッシング)のイラストレーションなど。
HP:https://juntada.tumblr.com

想いを馳せ信じることにより真実へと変わってゆく「物語」が削り出す、イラストレーションの未来

銅板に直接刻描するドライポイント、紙片の稜線からシルエットを産み落とす紙版画など、二次元のパースペクティヴが持つ可能性を最大限に引き出しつつリリカルで在り続けるその手法こそが表現のインディペンデンスを担保していることは、いたって疑いようのない事実だろう。だがいわずもがな、彼のクリエイティヴィティの本質はそこにはない。タダジュンが削り出しているのは、想いを馳せ信じることにより真実へと変わってゆく「物語」、なのだ。架空の出版社を主宰するサムなる人物が手がけた、古典小説の装丁の色褪せた陰影までも描き切り錯視させるーーそんな精緻な悪戯(メタフィクション)に一枚噛んだ寄稿者たちが見せる高揚は、戦時下に鳴り響くジャズにスウィングする群衆のように現実に拠らぬ生の悦びを肯定する。その比類なき熱狂は、いうなれば画による虚構の入れ子構造が見せるイラストレーションの未来、メタイラストレーションである。(担当:藤井道郎)