岡野賢介
イラストレーター。1979年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。主に書籍や雑誌の装画、挿絵などで活動中。主な受賞歴に、2016年タンバリンギャラリー「Human Museum」大賞、2017年「ペーターズギャラリーコンペ」サイトウユウスケ賞。
“シンプル”に隠された秘密
絵を観るとき、肩に力が入ってしまう人がいたら、安心してほしい。この絵に込められた意味は云々…と考え込まず、ひと目見て楽しめる絵を描くイラストレーターもいるからだ。
岡野賢介さんの作品「POSE」には、定められたフレームの中で、窮屈ながらもポーズをバッチリ決めた人物が描かれている。単純明快であることの強さも備えつつ、何よりそのクリエイティビティに心が沸き立つ。絵を観た人からは、「こんなポーズも楽しそう!」といった提案もよくもらうという。懐の深い絵は人の好奇心を刺激し、会話も自然と生まれるのだろう。
“引き出し“の多さも、岡野さんの魅力だ。漫画家を目指していた頃に培ったアングルや光の描写、玩具・雑貨デザイナー時代の経験。映画の様々なシーンから着想を得た構図のアイデア。さらに、ファッションや時代劇、詩などに対する強い関心は、ジャンレスに活躍する装画などの仕事にも活かされている。
そして、必見すべきは原画。風景画では、ワントーンに統一し、水性インクで描かれた色彩の美しさに目を奪われる。人物画では、モチーフを形作る緊張感のある線の存在を知ることができる。シンプルで強い絵を支える要素とは何か、きっと肌で感じられるはずだ。
(担当:柿本康治)