イラストレーションフェスティバル

マメイケダ

マメイケダ

マメイケダ

1992年生まれ。島根出身、大阪在住。食べたごはんをよく描いている。展覧会での発表や書籍・雑誌の装画など、主に画業を活動とする。受賞に「HBファイルコンペ」Vol.26 副田高行特別賞、Vo.27 仲條正義賞。作品集に『味がある。』(誠光社)『ふうけい』(iTohen)。装画に『ウマし』(伊藤比呂美著/中央公論新社)『帰ってきた日々ごはん』(高山なおみ著/アノニマ・スタジオ)『東京近江寮食堂』(渡辺淳子著/光文社)など。
HP:https://www.mameikeda.com

味があるのは、わけがある。

生活に即した絵は、人を選ばない。マメイケダさんが描く食べものは、美味しさだけではなくて、見た目のよさでもなくて、食べることそのものへの喜びを思い出させてくれる。惣菜・仕出しの会社での調理の仕事を経て独学で描いてきた絵には、マメさんの食に対する分け隔てのない愛情ある視線が表れているように思う。

これまで何度か展示に伺ったが、中でも忘れられないのは、2018年7月に長野県木崎湖で行われたイベント「ALPS BOOK CAMP」会場内での展示だ。湖のほとりにある小屋に靴を脱いで上がり、畳の上であぐらをかいて、マメさんとスイカをかじりながら絵を眺めた。近くでは小さな女の子が寝そべって、暇そうにゴロゴロ転がっている。大きく開けた窓からは涼しい風が吹いてきた。この場所はどこかに似ていると感じて、すぐに思い出した。小さな頃に、おばあちゃんの家で過ごしたあの夏の空気だ。そんな懐かしい思い出がよく似合う絵。

マメさんと交わすメールが好きだ。暑い日が続いた時は、コンビニのアイスが話題だった。素朴で、小さな幸せを知っている人。絵に添えられた言葉にも通じている。たとえば、輪切りのトマトの絵に書かれたフレーズは「塩があればいい」。なんて気持ちのいいストレート! 思わず笑顔になってしまう。

いま、マメさんはどんどん新しい絵を描いている。旅先で目にした海の風景、日がな一日のんびり過ごす猫、そして人物画も。でも、それらはすべてマメさんの手が届く距離にあり、自分の感覚で味わったもの。素直な気持ちで描かれた作品は、純粋に食べる喜びや、忘れかけていた大切な場所を取り戻させてくれる。そんな、味のあるマメさんの絵が好きだ。(担当:柿本康治)