大森木綿子
愛知県生まれ、東京都在住。水彩・色鉛筆・クレヨンなどの画材を用いて、心に浮かんだことや自然の風景を題材に描く。主にパッケージ・雑貨・テキスタイル等のイラストを手掛けている。2008年頃からオリジナル雑貨をつくりはじめ、その後もみじ市など、各地の展示やイベントに参加。飾る・贈るなど様々に利用できる横長のカードやブローチは、一点ずつ手作りで制作されている。
HP:http://omoriyuko.com
自らの掌の中にこそかけがえのない美しさと儚さがあることに気づかせてくれる、唯一にして可憐な革命
不世出にして伝説の写真家ソール・ライターのことばを借りるなら、「写真家からの贈り物は、日常で見逃されている美を時折提示することだ」とは、彼女の描き出す絵をもまた等しく指し示すのだろう。日常の造形が持つ愛らしい輪郭たちの連なる風景を、美しく調和したプロポーションで裁断する大森の眼差しは、情感を湛えた瞬間を大胆な構図と艶やかな色彩でフレームに捉えるフォトグラファーの絶対的直感と、はたしてシンクロナイズしているように思えてならないのだ。そしてそれはとても孤高でパーソナルな表現であり、だからこそ人はその楚々としたイノセンスに静かに共振する。それこそが世界の果てにたどり着かずとも、ほかでもない自らの掌の中にこそかけがえのない美しさと儚さがあることに気づかせてくれる、たったひとつの真理であり手段だからだ。そう、これは彼女がその手にあらかじめ宿している、唯一にして可憐な革命である。(担当:藤井道郎)