イラストレーションフェスティバル

横山雄

横山雄

横山雄

イラストレーター、グラフィックデザイナー。桑沢デザイン研究所卒業。デザイン事務所・美術書籍会社を経て、独立。受賞歴に、第33回「ザ・チョイス年度賞」入賞、第83回「毎日広告デザイン賞」最高賞。
HP:http://yokoyamaanata.com/

心を震わすほどの勇気

モチーフを選ぶ。線を引く。色を塗る。描くものと描かないものを決める。描くことは決断の連続だ。ライブペインティングなどで今まさに描かれていく過程を目撃すると、描かれた軌跡の生々しさに驚くことがある。完成した絵だけを見ると、その潔さはどうしても薄れている気がするが、そうではない絵も存在する。画面の端々に刻まれた勇気が瞬きのスピードで心に飛び込み、色や形に導かれるように意味が捉えられる。言葉を必要としない、見る者と描く者との対話。それが、横山雄さんの描くイラストレーションだ。

「このイベントで、僕たちとどんな場所を作りたいですか?」と横山さんに聞かれたことがある。個人としての答えを伝えると「それは“情景”かもしれないですね」と言って、「ポンヌフの恋人」というフランス映画のとあるシーンを教えてくれた。パリのポンヌフ橋を舞台に、天涯孤独の青年と眼に病を患った女子画学生が織りなす物語だ。革命200年祭を祝い、花火や音楽が乱れ交うパリの街。酒に酔い、火の粉舞う夜のポンヌフ橋の上で踊り狂う2人はクレイジーそのもの。だが、そのシーンはとてつもなくエネルギッシュで、暗闇から光を見いだした両者の心の描写とも感じた。花火の光に彩られた2人の姿、そしてポンヌフ橋は輝き、生命力に満ちあふれていた。

「花火そのものが美しいのではなくて、それを眺める人々、それに照らされる人々が美しいこともある」と横山さんは話す。ポンヌフ橋がこのイベントの会場に、そして花火が横山さんの絵になりえるのではないか。潔く描かれた筆跡は、人々を照らす光となるのではないか。そんな期待をしてしまう。作品を一度近くで見つめたら、2、3歩後ろに引いてみてほしい。美しいものを見つめる人々の姿も、横山さんが思い描いた風景だろうから。
(担当:柿本康治)


当日は新作ポスター6点の展示・販売を行います。オフセット印刷。3,500円(税込)。ただいま製作中のポスターの絵を3点お送りいただきました。

シルクスクリーン ポスター「Circle Bird」 ¥6,500
ドイツのハンブルグに滞在中、現地のシルクスクリーン工房「druckdealer」と2017年に制作。

横山雄さんのブースナンバーは「15」。こちらの絵が目印です。